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「早く大人になってくれると助かるんですけど……」
拓巳は、ふっと吐き出すように言った。
「大丈夫だよ。
璃子の誰よりも穏やかで優しくて温かい心と、素直さは、弱点であり、長所であり、最大の武器だよ」
「最大の武器?」
「あぁ。璃子の優しさに触れた人間は、彼女の優しさに包まれたい、守ってやりたい、応援してやりたいって思わされる。
だから、笑顔溢れる璃子の周りには、彼女の良さに気づいている仲間であり、彼女の魅力に取りつかれた仲間が引き寄せられ取り囲んでいるよ」
「確かに、言われてみればそうですね」
俺と拓巳は、薄まったジントニックをひと口飲んだ。
「松本さん」
「んっ?」
「璃子のこと、大切にしてやってください。幸せにしてやってください」
「それは……
隣の幼なじみとしての発言かな?それとも……」
――男としての?
俺は、ゆっくりと視線を拓巳に向けた。
「あっ、もちろん、隣に住んでるカッコいい幼なじみのお兄ちゃんの発言っすよ」
そう言い放つと、拓巳は、自分の気持ちを飲み込んで隠すかのように、ぐいっとジントニックを飲み干し、そして続けた。
「あーっ、すいません。なんだかしゃべり過ぎました。酔ったのかな?帰りましょうか?」
「あぁ」
「今夜は、俺の奢りですから。お誕生日おめでとうございます」
「璃子から、拓巳に夕飯でも奢ってもらうようにってメールが来てたよ」
「あっマジっすか!?アイツは、俺の財布を自分の物と勘違いしてやがる。日本に戻ったら請求しときます」
拓巳は、得意の笑顔でニヤッと笑った。
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