ずっとそばにいてくれたね 第28話

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扉が閉まり、ふたりっきりになったところで、あたしは、また優輝さんに声をかけた。 「あっ、あの、優輝さん」 「こーらっ、璃子!」 「はいっ!」 優輝さんは、急に怒ったような表情を向けた。 「俺が、食べたい人と食べたい場所に来る。文句あるか!?」 「あっ、ありませんっ」 ギュッと睨み付けられる瞳に、あたしは一瞬で硬直した。 「じゃあ、黙って俺についてこい。なっ、璃子」 一瞬前とは別人で、優輝さんは、今度は優しく微笑みながら言った。 「……はい」 得体の知れない汗が吹き出したあたしに、優輝さんは、ニヤリと笑った。 同時にエレベーターの扉が開き、フロントの階に到着した。 あたしたちは、エレベーターを乗り換え、最上階のレストランへと向かった。 「白石様、いらっしゃいませ」 ウェイターの案内に従い、あたしたちは奥の席へと案内された。 4人掛けの席へと通され、あたしたちは夜景がよく見える席の角に、隣同士で座った。 「優輝さん」 「んっ?」 「もしかして、予約してたんですか?」 「えっ!?」 「だって……」 「璃子」 「はい」 「そう言うことは、聞いたらダメだよ」 「えっ!?」 「企業秘密!」 「企業秘密って、優輝さんっ企業じゃないしっ」 思わず吹き出したあたしと、瞳を合わせた優輝さんは、小さな声でクスクス笑いあった。
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