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お腹が落ち着いてきて、冷静になると、あたしはもう一度ゆっくり周りを見渡した。
有名ホテルで、この綺麗な夜景。
そして、店内の落ち着いた雰囲気。薄暗い店内は、テーブルだけはほんのり明るくて、思わずふたりっきりって勘違いしてしまうような空間。あちこちで恥じらう事なくそっと手を握りあってる恋人たちからは、大人の空気が漂っている。
品の良い雰囲気は、特別を醸し出していた。
お料理代も、お高いんだろうな……
『優輝さんは、白石物産の次男なのよ』
あたしの頭の中では、麗香さんの言葉がリフレインしていた。
「どした?」
穏やかな声に、ハッと我に返った。
「あっ……別に」
「そう?なんだか取り残されてますって顔してるけど?」
「……」
バレバレじゃん。
あたしは、優輝さんの家庭の事情を知っていることを悟られないように、言葉を選びながら、麗香さんと会った後からずっと気になっていた事を聞いた。
「あのね、優輝さん」
「んっ、どした?」
「優輝さんが、もし結婚するとして、ご両親がっていうか……その……条件とかってあるんですか?」
「条件?」
「あの、ほらっ、どこぞのお嬢様がいいとか……
有名大学卒業とか……」
「ほほぉ。それで?」
「えっ……。やっぱり、それなりのご家庭の方を望むのかなって」
「っで、なぜ俺に聞くの?」
「えっ……」
だって、白石物産の次男なんでしょ!?
言えない事実が、あたしの言葉を途切れさせる。
「ふーん」
優輝さんは、何かを感じたのか、首を傾けながら意味深な眼差しであたしを見つめた。
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