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偶然、会話が途切れた時だったから、あたしの鞄の中の着信音が、うっすらと聞こえた。
「携帯?」
「あっ、すいませんメールです」
「見てみたら?和也かもしれないだろ」
「あ……っ、どなたでしょうか?」
和也さんからは、こんな時間にはメールは来ない。でも気になったあたしは、優輝さんに許可をもらい携帯を開いた。
携帯のディスプレイには、『麗香さん』と表示されていた。
「どうしたんだろう?」
思わず、心の叫びが口から溢れた。
「誰?」
「あっ、お友達です」
「個人情報漏洩の?」
「……はい。でも、メールいただくのは初めてなんです」
今さら嘘の上塗りは嫌だから、誰かは言わなかったけど、素直に認めて頷いた。
『璃子さんお元気かしら?
先ほど日本に戻って来たの。
お話していなかったけれど、ニューヨークで大切な方をお伺いした日は、彼のお誕生日でね。私、1番近くでお祝いさせていただいたの。
プレゼントも喜んでいただけて、とても素敵な時間を過ごさせていただいたの。
大切なお友達である璃子さんには、報告させていただくわね』
麗香さんのメールは、とても幸せ溢れる文面だった。
「何て?」
「あのね、お友達なんですけど、縁談を進めている大切なお相手がニューヨークにいらっしゃるらしくて、自分の『好き』って気持ちを伝えに逢いに行かれたんですよ。どうやらうまくいったみたいで、その報告です」
あたしは、文面からうまくいったんだと察して、優輝さんに喋っていた。
「へぇ~それはよかったね」
「あっ、優輝さん、ちょっと待ってくださいね。写真が添付してあるから見てみます」
あたしは、優輝さんと微笑みを交わして、そのままスクロールさせた。
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