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「璃子、まさか知り合い?」
「えっ!?ちがっ、違います。全然、全然知らない人でした」
ぶんぶんと必要以上に頭を振った。
「フッ……まぁ、そうだよな。ニューヨークに行ってる璃子の知り合いって言ったら、和也ぐらいだろ?」
「アハハハ……」
その和也さんの写真でしたなんて、現状もうまく理解出来てないのに言えなくて、あたしは乾いた笑い声をあげた。
「いくら世間は狭いと言っても、和也に限ってそれはないな」
「ええ。そうですよ。こんなに世界は広いんだから、かぶるはず無いじゃないですか」
「かぶる?」
「へっ!?」
マズイ。動揺と混乱が、口を開けば開くほど、おかしな会話を生み出してゆく。
「璃子?」
「そっ、そろそろ帰りましょうか?」
あたしは、逃げたい一心で言っていた。
「えっ!?あぁ、そうだな。すっかり遅くなったな」
突然のあたしの言葉に、さすがの優輝さんも一瞬驚きの表情を見せた。
仕方がない。たった今まで楽しく会話をしていながら、写真見たあと、すぐに帰ろうだなんて。
あたしの動揺は、この場の空気までも乱していた。
「すっ、すいません」
連れてきていただいてるのに、いきなり帰りたいなんて失礼な発言をしてしまった事に、胸が痛んだ。
ただ、今のあたしには、これ以上、平静を保てる自信なんてなかった。
次から次へと頭の中に浮かぶ質問の嵐を、なんとかシャットアウトするだけで精一杯だった。
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