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「えっ!?」
「何があった?」
「えっ……」
「さっきのメール。いや、写真見てから様子が変だから」
優輝さんの眼差しが、何かを見抜こうとする。
「えっ!?何にもないですよ」
まだ、聞いてほしくない。そんな気持ちからか、答えながら目線を逸らした。
「そう?」
「ええ」
これ以上は、聞かないでほしい。
そう思った瞬間だった。
掴まれた右手首が、ゆっくりと離された。
「ならいいんだ。璃子は、抱え込むところがあるから、あんまり、ひとりで考え込むなよ。困った事があったら和也も居ないんだし、ちゃんと相談しろよ」
ふと見上げた先には、優輝さんの優しい眼差しがあった。
「ありがとうございます。
まっ、また技を出してるでしょ!?あたしで試すのやめてくださいよ」
あたしは、揺らぐ心を悟られないように、明るく切り返した。
「よしよし。これも有効っと」
なんて言いながら、優輝さんは、あたしの切り返しに乗ってくれて、手のひらにメモをとるフリをした。
車から降り、ドレスをいただくと、走り出した車をそっと見送った。
優輝さんは、あたしの心を察して、踏み込む事をやめ、気づかないフリをしてくれた。
「ありがとうございます」
あたしは静かに呟いた。
生温かい風が、あたしの肌にまとわりつきながら通りすぎた。
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