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部屋に入り、荷物を置いた。
リビングのソファーに腰かけると、鞄から、さっき投げ入れた携帯を、恐る恐る取り出した。
深呼吸して、ドキドキしながら、携帯を開くと、画面には、麗香さんからの添付写真が表示されたままになっていた。
「和也さん……」
久しぶりに見た姿は、相変わらず素敵で、表情は蕩けそうなほど優しく、写真とはいえ目を奪われた。
「元気そうでよかった……」
あたしは、すべての感情を押し殺して、ただ目の前の和也さんに瞳を向け、声をかけた。
しかしながら、食い入るように見つめた瞳が、次の情報を探し出す。
あっ……ネクタイ。
和也さんが締めているものは、間違いなく、麗香さんがあたしの目の前で選んだものだった。
「似合っ、てる……よ」
必死に余計な情報をシャットアウトしながら、和也さんに話しかける。
でも、どんなにシャットアウトしても、次から次へと浮かぶ思いが、あたしの心を苦しめた。
麗香さんが逢いに行った、縁談を進めているお相手は和也さんで。
ふたりは、ニューヨークで逢っていて。
麗香さんが用意したプレゼントは、和也さんに渡されていて。
そのプレゼントを受け取っている和也さんがいて。
目の前から読み取れる情報だけでも倒れてしまいそうなほどにギューッと、息も出来ないほど胸が締め付けられた。
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