1496人が本棚に入れています
本棚に追加
そうだ、いろいろ考えてないで電話すればいいんだよ!
和也さんに聞けばいいんだよ!
思わず手の中の携帯をギュッと握りしめた。
でも、今は、仕事中だよ。
おまけに、浮かんでくる言葉は、どちらかと言えば責める言葉ばかり。なんて言ってかけるの?
それに、あっさり認めた上に「ごめん璃子別れよう」なんて電話口で言われたら……耐えれる?
じゃあ、メールを送ろう!
でも、何時間も返事待ってられる?もし、返事も来なかったら?
行動を起こそうとするあたしを、もう1人のあたしが引き止める。
あたしは、この1ヶ月、気がつかないうちに頑張りすぎていたのかもしれない。
「声が聞きたい」ってメールしたら、絶対に和也さんなら折り返し必ず連絡くれただろうに。
でも、他の明るいメールは打てても、肝心な心の叫びである、たったその数文字を打つことも、送ることも出来ないくらいに、あたしは、気がつかない間に我慢を重ねていたのかもしれない。
あたしは、我慢の仕方を覚えた代わりに、和也さんとのコミュニケーションの取り方を、忘れてしまっていた。
「なん、で……?」
どう考えても答えの見つからない心が、苦しくて堪らなくて悲鳴をあげた。
「ど、して……?」
言葉に出してしまった弱音が、少しずつ心のバランスを崩す。
携帯の中で微笑む和也さんが、ゆっくり、じわりと滲み、ツーッと、涙が零れ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!