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逢いたい……
「……逢いたい」
胸に浮かんだ想いを言葉にすることによって、言霊(ことだま)のエネルギーを得た想いは一気に現実のものとなった。
「和也さん、逢いたいよぉ……」
今まで心の奥底に沈めていた想いは、一気に膨れ上がり、あたしの心を支配した。
そして、あたしの中の『恐れ』の感情が、ゆっくりあたしに襲いかかり、まさか、もしかしてふたりは……と、事実ではないかもしれない妄想を生み出した。
夜の闇が、あたしの思考を飲み込み、下へ下へと引きずり落としてゆく。
ゆっくりと堕ちてゆく思考は、『待ってろよ!』って力強く言った和也さんの言葉も、笑顔も、優しさも、一瞬で闇に包み、きれいな心をも、汚していった。
気がつけば、窓から朝日が射し込み始めていた。
結局あたしは、いつものおやすみなさいのメールを送ることも出来なくて、携帯を持ち、写真の和也さんを見つめたまま、『恐れ』の感情と戦いながら、自問自答を繰り返し、朝を迎えていた。
「仕事、いかなきゃ……」
楽しい気持ちの徹夜は、ハイテンションで乗り越えられるだろうが、悩み苦しみ、哀しんだ徹夜は、確実に、あたしの心と身体からエネルギーを奪っていた。
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