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ランチタイムを迎え、俺は何度も携帯画面を確認していた。
……おかしい
今まで、この1ヶ月以上、一度だって璃子からメールが来なかった日はなかった。
休みの無かったお盆休みに、体調を崩したのだろうか?
それとも、何かがあったのだろうか?
たった一度メールが来ないだけで、こんなに心が乱されるなんて……
それだけ璃子はきちんとした女性であり、俺の心には無くてはならない存在だった。
電話をかけるには、日本はすでに深夜。今更、起こす事になっても申し訳なくて、俺は何度も携帯を触りながら、落ち着かない心をもて余していた。
「寝ちゃったんですよ」
声と同時に、コーヒーが差し出された。
声のする方を見れば、拓巳が、ニヤリと笑っていた。
「ありがとう」
「いいえ」
「ところで、何が、だ?」
「とぼけても無駄ですよ。璃子からのメール待ってるんですよね?」
「……」
明確に心を言い当てられ、言葉を失った。
「大丈夫ですよ。アイツに限って、浮気は無いです。忠犬ハチ公も驚くほどの真面目っぷりですから。松本さんの帰りを『待て』して待ってますよ」
「からかうなよ」
「すいません。ですが、専務の心の負担を減らすのも、私の仕事ですから」
拓巳は、真剣な表情で俺を見た。
俺は、フッと頬を緩め、コーヒーを口に含んだ。
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