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『なになに!?』
案の定、冴子がツッコミを入れる。
「携帯の電源が切れてるみたいだから、確認するように伝えておいてくれ。じゃないと仕事に支障が出る」
サラリと用件だけ告げた。
『ふーんっ。業務連絡みたいな事言ってるけど、声を聞こうとしたら繋がらなかったのねっ。純愛じゃん♪
っていうか、放りっぱなしだから、拒否られてんじゃないの?』
「なっ!?」
『ちゃんと心の声を聞いてあげてるの?
時差って結構厄介でしょ?
待ってる方は、長く感じるし、淋しいのよ。相手を想えば思うほど言いたいことも、わがままも言えなくなるんだから。それに相手は、まだまだ汚れを知らないかわいいひよっこ璃子ちゃんなんだから、あんまり頑張らせすぎると、潰れちゃうわよっ』
「……わかってるよ」
『クスクス……じゃあ、ごめん!本当に忙しいから。またかけるわっ。携帯の件は伝えとくから』
「あっ、冴子!余計なこと言うなよ!」
俺の声が届く前に、冴子の電話は切れた。
「はぁーっ」
思わず大きなため息が零れた。
でも、よかった。元気なら。
そして俺は、璃子の携帯が復活した時に読めるようにと、璃子の笑顔を思い浮かべ、愛しい気持ちに包まれながら、いつもよりも長めにメールを書いた。
そして、今は遠いけれど、気持ちは誰よりもそばにいて、誰よりも愛しているという気持ちを込めて送信した。
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