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徹夜明けの仕事は、正直キツかった。ふらふらで、目眩がする。
でも、そんな事お構いなしで、お盆休み明けの社長室には、たくさんの来客が続いた。
「桜井さんお疲れみたいだね?」
気の利いたメーカーさんが話しかける。
「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
「彼氏と遊んでたのかな?」
「ナハハハ……」
悪気の無い言葉は、時にザックリ胸に刺さる。痛みに耐えながら、あたしは愛想笑いを浮かべた。
午前中は、社長室と給湯室を往復しながら、せっせとお茶出しに追われていた。
「あっ、璃子!」
「はいっ」
社長室からさげたお湯のみを持ち、給湯室へと向かっていると、後ろから冴子さんに声をかけられた。
「携帯の電源切れてるわよっ」
「えっ!?」
「行ってきます」
偶然、見かけたあたしに声をかけたって感じの冴子さんは、それだけ言うと、ウインクして忙しそうにフロアを出ていった。
「あっ!行ってらっしゃいませ」
呆然と見送りながら、思わずポケットの携帯を取り出した。
あっ……ホントだ!充電が切れてる。
朝までずっと和也さんの写真見てたからだ。
でも、どうして解ったんだろう?
不思議に思いながらも、すぐにパソコンに繋いで充電を始めた。ジッとしている暇は無く、携帯をデスクに置いたまま、あたしは、片付けに戻った。
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