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そもそも……
あたしは、始めに感じた疑問に戻った。
なぜ、冴子さんがあたしの携帯の充電が切れている事に気づいたのか?
このメールを見れば、連絡を取ろうとした和也さんに聞いた事になる。
和也さんが、冴子さんに連絡したんだろうか?
それとも、冴子さんが用事で連絡したんだろうか?
みんなとは、普通に連絡取ってるんだろうか?
そんな事、どうでもいいはずなのに、弱りきった心は、見過ごす事も出来ずに、小さな嫉妬にもつまづく。
いずれにせよ、『恐れ』と『不安』に襲われているあたしの心と疲れた身体は、すべてをマイナスへと引きずり込んで行った。
それからは、夜も眠れないし、ご飯も喉を通らない日々が続いた。
ただ、仕事をしている間だけは、忙しさにすべてを忘れ、お陰であたしらしくいられた。
しかしながら、帰る時間になると、蓄積された疲労に襲われ、途端にぐったりとなった。
「桜井さん大丈夫?」
さすがに見かねた藤井さんが、ドリンク剤を差し出した。
「……」
「効くから飲みなさい」
「ありがとうございます」
「若いっていいわね」
「えっ!?」
「フフッ……今しか味わえない気持ちなんだから、しっかり向き合って辛い気持ちもしっかり味わって楽しみなさいな」
藤井さんは、もがいているあたしを微笑ましく見つめ、「じゃあ、出先から直帰するから」って言いながら秘書室から出ていった。
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