1496人が本棚に入れています
本棚に追加
スゴいなぁ……
きっと、人生の大先輩である藤井さんには、もがいた後の成長したあたしの未来が見えているのかもしれない。あたしの悩みなんて取るに足らない事なのかもしれない。
もっと苦しい思いを経験されたのかもしれない。
あたしもにもいつか、この苦しみを笑える日が来るんだろうか?
大先輩の励ましに救い上げられた心が、冷静さを取り戻す。
しかし次の瞬間には、
その時、あたしのそばには誰がいるんだろう?
と、見えない未来に怯えた心が、ズブズブと沈んだ。
あたしは、瞬時に変わるたくさんの感情に振り回されていた。
気がつけば、9月を迎えていた。
週末に時間を取ってと話していたが、神さまのイタズラなのか?結局、和也さんとあたしのタイミングは合わなかった。
そして、あたしはもがき苦しみながらも、和也さんに心の動きを悟られないように当たり障りのないメールを送り続けた。
和也さんからは、相変わらず『縁談』を微塵も感じさせない優しさに満ちたメールが届き、それが返ってあたしの心を傷つけ、深い闇へと誘(いざな)った。
そして、ついに和也さんの帰国の日が近づいた。
『璃子、今から飛行機に搭乗するよ。もうすぐ逢えるね。日本には午前中に着くけど、打ち合わせとかがあるから、時間が取れそうにないが、パーティーが終わったら、すぐに部屋に行くから、先に寛いで待ってて』
あたしがパーティーに出席する事を、本当に知らされていない和也さんからのメール。
みんなのサプライズは成功するんだろうか?
本当は、もう必要のないサプライズなんじゃないだろうか?
本当に、和也さんは、あたしに逢うことを喜んでくれるんだろうか?
『恐れ』で凝り固まった心は、すでに冷静な判断も出来なくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!