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「……ったく。璃子、どうしたんだよ?お前、おかしいぞ?」
優輝さんが、微笑みながらあたしの顔を覗き込んだ。
「えっ……」
「言ってごらん。この前のメールからおかしい」
柔らかな会話に交えて、突然、突かれる核心。
今まで笑顔で柔らかだった眼差しが、一気に真剣なものに変わり、あたしは、逃げ場を失った。
「えっと……」
「俺には言えないかな?」
優輝さんは、少し寂しそうな表情を浮かべた。
「あの、えっと……」
まだ、状況証拠ばかりで確信がないんだもの。迂闊に優輝さんには、言えない。あたしは、俯いた。
「まぁ、仕方がないけど。由香里も早川も『痩せた』って心配してたよ。正直、俺も今日のドレスを見て、ちょっと緩くなってるのには気づいたんだけど。
誰かに言えば、すぐに解決する事もあるし、みんなちょっと最近忙しかったけど、それなりに心配してるんだよ。だから、抱え込むのも、口が固いのもほどほどにな」
「ありがとうございます」
みんな……。あたしは、じわりと温かいものに包まれた。
「ちょっと休憩しよう。
悪いけど俺、何件か連絡入れないといけないから。
ここら辺にいるから、ゆっくりしておいで」
優輝さんは、携帯を片手に微笑んだ。
でも、それはきっと嘘で、あたしが疲れているのを見抜いて、休ませてくれようとしてついた優しい嘘だ。
「ありがとうございます。では、化粧室に行ってきてもいいですか?あそこにはソファーがあったので、少しだけ座らせてください」
あたしは、素直に、優輝さんの優しい嘘に甘えさせていただいた。
優輝さんは、ゆっくり頷くと、あたしにそっと笑顔を向けた。
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