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あっ……。
あたしは、一瞬息を飲んだ。
「璃子さんお久しぶりね。お元気だった?」
いつも通り、お嬢さまらしく柔らかく微笑みながら、彼女は、自然とあたしの前に歩み寄った。
「……麗香さん」
あたしの身体は、一瞬で強ばりながらも、ソファーから慌てて立ち上がった。
あの先日のメールの返事もしていない。気まずい事は、この上もなかった。
何か言わなくちゃ!
メールありがとうございましたって言う?
でも、それってなんだかおかしいよね?
あたしが和也さんとお付きあいしてることを告げて、理解してもらう?
でも、いきなり!?
いや、まずは、ニューヨークでの事を、おめでとうございますって言う?
でも、そんなこと言えない。言いたくない!
どうしよう。どうしたらいい?
和也さんに会うことしか頭になかったあたしには、麗香さんとの遭遇は、予想外の展開であり、不意討ちであり、一瞬で心がざわついた。
パニクるあたしは、頭の中で1人自問自答を繰り返していた。
麗香さんは、相変わらず、いつも通りの上品な立ち姿で、すでに平静さを失っているあたしを、余裕の微笑みを浮かべて見つめていた。
そして、少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべたかと思うと、艶やかな唇をゆっくりと動かした。
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