◇◇ 第38章 崩れる心 ◇◇

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「解っていただけたかしら?」 柔らかく発せられた言葉が、あたしの耳に届いた。 ……えっ!? 何が!? 何を!? 予期せぬ言葉に、頭の中のもう1人のあたしが、全力で解読の為に走り出した。 「あの……?」 「解っていらっしゃるとは思うんだけど。和也さんにとって、今は1番大切な時なの。だから、これ以上は、彼の手を煩わせたくないのよ」 大切な方を守ろうと、儚く切ない眼差しが、あたしに向けられる。 「えっ……と、それは……」 次から次へと繰り出される想定外の言葉たちに、解読が進まず、状況がてんで掴めない。 「お願い璃子さん。もう邪魔はやめて」 畳み掛けるように麗香さんが続ける。 えっ!? 邪魔なのは……あたし!? 『ひぃーっドロドロ!』 困惑するあたしの心に、昨夜聞いた村上姉さんと美紅ちゃんの叫ぶ声が聞こえた気がした。 「あのっ、あの……」 「璃子さんお願い。私、和也さんの事を守ってさしあげたいの」 「ちょっ、ちょっと待ってください」 どんどん被せられる言葉を、やっとの思いで止めた。 麗香さんが、あたしの次の言葉を待っている。 あたしはゴクリと喉を鳴らした。 「あの、あたし、和也さんとお付きあいさせていただいています」 追い込まれたあたしは、勢いのまま胸の内を告げていた。
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