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「解っていただけたかしら?」
柔らかく発せられた言葉が、あたしの耳に届いた。
……えっ!?
何が!?
何を!?
予期せぬ言葉に、頭の中のもう1人のあたしが、全力で解読の為に走り出した。
「あの……?」
「解っていらっしゃるとは思うんだけど。和也さんにとって、今は1番大切な時なの。だから、これ以上は、彼の手を煩わせたくないのよ」
大切な方を守ろうと、儚く切ない眼差しが、あたしに向けられる。
「えっ……と、それは……」
次から次へと繰り出される想定外の言葉たちに、解読が進まず、状況がてんで掴めない。
「お願い璃子さん。もう邪魔はやめて」
畳み掛けるように麗香さんが続ける。
えっ!?
邪魔なのは……あたし!?
『ひぃーっドロドロ!』
困惑するあたしの心に、昨夜聞いた村上姉さんと美紅ちゃんの叫ぶ声が聞こえた気がした。
「あのっ、あの……」
「璃子さんお願い。私、和也さんの事を守ってさしあげたいの」
「ちょっ、ちょっと待ってください」
どんどん被せられる言葉を、やっとの思いで止めた。
麗香さんが、あたしの次の言葉を待っている。
あたしはゴクリと喉を鳴らした。
「あの、あたし、和也さんとお付きあいさせていただいています」
追い込まれたあたしは、勢いのまま胸の内を告げていた。
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