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焼きついたふたりの姿に、思わずギュッと瞳を閉じた。
自然と胸を押さえる。
……苦しい。
もはや、平静なんて保っていられず、とにかくここから離れなくてはと、あたしの心が警告する。
あたしは、そのまま振り返ると、会場から少し離れた、会場関係者が使う階段へと向かった。
とりあえず気持ちを落ちつかせる為に違うフロアへ行こう。
グラつくヒールで階段をゆっくりと降りた。
「璃子!?」
途中まで降りたところで、階上から名前を呼ばれて振り向いた。
見上げた先には、優輝さんがいて、全然違う方向に向かったあたしに驚いて追いかけてきたという感じだった。
「……優輝さん」
あたしの表情は、きっと酷く歪んでいたのだろう。
不思議そうに見ていた優輝さんの顔が、あたしの顔をみた途端、一瞬でその表情を変え、眼差しは心配の色を濃くした。
「璃子、どうした!?」
駆け寄ろうとする優輝さんに、驚いたあたしは、目測を誤った。
ただでさえグラつくヒールは、階段を踏み外し、簡単にバランスを崩したあたしは、そのまま階下に向かって転落した。
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