◇◇ 第38章 崩れる心 ◇◇

20/39
前へ
/40ページ
次へ
「痛ったぁ……」 残り数段だったとはいえ、その衝撃は、それなりに凄かった。 振り返りながら、うまく滑り落ちたとは思うものの、疲れきった身体には、かなりのダメージだった。 打たなかったものの、ぐわぁん、ぐわぁんと衝撃で頭が痛い。目を開けば、貧血のような真っ暗の状態で、そのままもう一度瞳を閉じた。 「大丈夫か!?」 駆け降りる足音と、声、と同時に、うつ伏せから抱き起こされてるのがわかる。 「璃子!」 声とコロンの薫りから、抱き起こしてくれているのは、多分、優輝さんであることがわかる。 「璃子!」 反応しないあたしに、優輝さんの焦る声が響いた。 心配をかけないように、あたしは、小さく頷いて応えた。 「璃子……」 あたしが反応したことに安心した優輝さんの声色が、変わった。 ゆっくりと瞳を開く。まだチラチラと砂嵐のように黒いものが視界を邪魔する。 ぼんやりと見上げれば、目の前には、心配そうに見つめる優輝さんの顔があった。 「……すいません」 「そんな事、いいから」 優輝さんの、背中に回された左腕に抱き起こされ、あたしは優輝さんの腕の中にいた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1368人が本棚に入れています
本棚に追加