1368人が本棚に入れています
本棚に追加
「痛ったぁ……」
残り数段だったとはいえ、その衝撃は、それなりに凄かった。
振り返りながら、うまく滑り落ちたとは思うものの、疲れきった身体には、かなりのダメージだった。
打たなかったものの、ぐわぁん、ぐわぁんと衝撃で頭が痛い。目を開けば、貧血のような真っ暗の状態で、そのままもう一度瞳を閉じた。
「大丈夫か!?」
駆け降りる足音と、声、と同時に、うつ伏せから抱き起こされてるのがわかる。
「璃子!」
声とコロンの薫りから、抱き起こしてくれているのは、多分、優輝さんであることがわかる。
「璃子!」
反応しないあたしに、優輝さんの焦る声が響いた。
心配をかけないように、あたしは、小さく頷いて応えた。
「璃子……」
あたしが反応したことに安心した優輝さんの声色が、変わった。
ゆっくりと瞳を開く。まだチラチラと砂嵐のように黒いものが視界を邪魔する。
ぼんやりと見上げれば、目の前には、心配そうに見つめる優輝さんの顔があった。
「……すいません」
「そんな事、いいから」
優輝さんの、背中に回された左腕に抱き起こされ、あたしは優輝さんの腕の中にいた。
最初のコメントを投稿しよう!