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……優輝さん
久しぶりに伝わる人の温もり。
落ちたと同時に、あたしの心のいろんな気持ちが零れ落ちたようだった。
心がからっぽの今のあたしには、勿体ないほど、温かく感じた。
「大丈夫か?痛いところはないか?」
低く小さな声が、あたしに囁く。
あたしは、小さく頷いた。
「何があった?」
優しく囁く声が、あたしの核心にそっと触れる。
もしかしたら、あたしが化粧室から飛び出したところから見ていたのかもしれない。
あたしは、小さく首を振った。
「言ってごらん」
優輝さんの温かな声と言葉が、錆び付いたあたしの心の鍵を、ゆっくり溶かし、閉ざされたあたしの心を、こじ開ける。
言えるはずなんてなかった。
自分の存在が、周りを苦しめている事を知った今、吐き出すことも許されぬ想いは、自分の胸に閉じ込めるしかなかった。
「璃子?」
優輝さんの背中に回された腕にぐっと力が入った。
さすがに、あまりに頑ななあたしに優輝さんも業を煮やしたようだった。
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