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「ったく、背伸びしすぎなんだよ。お前は、お前らしくでいいんじゃないのか?」
拓にぃは、抱き抱えて歩きながら、ヒールに目をやると、ぼそっと呟いた。
全然、あたしの心の状態を知らない拓にぃが、いつも通りにからかい半分でツッコミを入れる。
「これは、璃子のせいじゃなくて、俺達が仕組んだサプライズの為に、履かされただけだよ」
申し訳なく思ったのか、優輝さんが、フォローを入れてくれた。
驚いた拓にぃは、一瞬、優輝さんに会釈をして、もう一度あたしを見た。
「……ごめん。言い過ぎた」
「いいよ。本当の事だから」
『背伸びしすぎ』という言葉は、以前、麗香さんに言われた言葉とダブっていたため、心を抉られたが、幼馴染みの拓にぃの言葉は、なぜかストンと心に届いた。
ホテルの一室には、グループのお抱えのお医者様がいらした。
「拓巳、今夜は忙しいだろう?あとは俺が付き添うからいいぞ」
「すいません優輝さん。では、よろしくお願いします」
優輝さんの提案に、拓にぃは頭を下げた。
「こらっバカ璃子。気をつけろよ。あとでまた見に来るからな」
「……ありがとう」
全然、あたしの心の状態を知らない拓にぃは、あたしにデコピンを食らわすと、ニヤリと笑って会場に戻って行った。
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