◇◇ 第38章 崩れる心 ◇◇

39/39
前へ
/40ページ
次へ
「俺が、璃子に直接、全てを確認するには、時間がなさすぎる。 しかも、青木親子の今後の行動は予測不能だ。 今、最優先に取るべき対策は、璃子と麗香の接点を完全に断ち切る事しかない! 素直な璃子は、別れたフリなんて出来る子じゃない。 俺が、璃子のそばに居てやれない以上、心の距離を埋めることも出来ないし、癒してやることも出来ない。 辛いが、ここは、俺がニューヨークから戻って来るまでの間、璃子との距離を取る事が、璃子を守る最善策としか言いようがない」 俺は、静かに話した。 「和也の気持ちは十分解った。 俺たちも、お前が戻って来るまでの間は、璃子ちゃんには青木グループとの確執はもちろん、この件に関しては一切触れない事にする。 和也が、そう決めた以上、俺たちに出来る事は、ふたりを見守ってやることだけだ」 「……なんだか切ないわ」 「仕方がないさ。とりあえず、和也が戻るまでは、璃子ちゃん自身が、この試練を乗り越える事を信じなくてはね」 隼人は、そっと冴子に微笑んだ。 隼人の言葉が、胸に染みた。 「じゃあ、今夜は解散だな」 隼人が、みんなに声をかけた。 「みんなありがとう。心配かけて済まない」 俺は、頭を下げた。 立ち上がった隼人が、俺の肩をポンッと叩いて部屋を出ていった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1368人が本棚に入れています
本棚に追加