1368人が本棚に入れています
本棚に追加
********
「専務就任おめでとうございます。いやぁ、グループも安泰ですなぁ」
「ありがとうございます。今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
俺は、会場内に気を配りながら、決まりきった挨拶に囲まれ、それなりの立ち居振舞いでやり過ごしていた。
あっ……優輝?
会場の入口から入ってくる優輝に視線がとまる。
仕事で招待されてたのか。さりげなく流した視線が、目立つ優輝を捕えた。
しかし、本当に視線が奪われたのは、その隣に立つ女性に、だった。
……璃子!
長い髪は巻き上げられ、透き通るほどの白い肌に、朱色の品のいいドレスが映える。
持ち前の柔らかな空気とオーラが、砂漠の中のオアシスのように、ざわつく会場内で、輝きを放っていた。
あぁ……璃子。
2ヶ月ぶりに見る璃子は、とても美しく綺麗で、砂漠の遭難者が、オアシスを見つけたような、感動と衝撃を受けた。
「頑張ってくれてる専務に、プレゼントを用意してみましたが?気に入っていただけましたかな?」
心ごと奪われている俺を見透かした隼人が、耳元で小声で呟く。
「なっ!?」
照れを隠しながら、平静を装い隼人に振り返った。
「いかがでしょうか?」
すべてを見透かした隼人が、ニヤリと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!