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「大丈夫か?」
優輝さんは、会場外の少し静かな窓辺に連れ出してくれた。
「すいません」
「気にしなくていいよ」
「ありがとうございます」
「今夜は、仕事じゃないからな。どうせ和也も忙しいし、ゆっくり遠目に見ておけばいいよ」
優輝さんは、申し訳なく俯くあたしを気遣い、優しく言いながら壁にもたれた。
「パーティーも、渡グループの専務ってお仕事も、すごいんですね」
会場の圧倒される空気から解放されたあたしは、ぽつりと呟いた。
「まあ、今回は、会社のツートップが揃うとあって、それなりに盛大にはなるよな。でもそれで?」
「えっ!?」
「和也は、全然変わってないよ。むしろ、アイツはどんな状況でも変わらない。璃子が知ってる、いや、璃子しか知らない和也のままだよ」
……優輝さん。
ぽつりと呟いた弱音が、一瞬で癒され救われる。
「でも、せっかくの皆さんからのサプライズなのに、あたしは全然気づいてももらえなくて、お役にもたてなくて……」
「アハハハ……」
優輝さんは、何がおかしいのか?声をあげて肩を揺らして笑った。
「優輝さん?」
「璃子。和也がお前に気づかなかったとでも思ってるのか!?」
「えっ!?」
「和也が、お前に気づかないはずないだろ!?会場に入った瞬間から、『璃子から離れろ』って、俺は威嚇射撃を受けてたぞ!?」
「えっ……」
優輝さんのうれしすぎる言葉に、あたしの心が、飛び跳ねた。
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