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止められない愛しい気持ちが、溢れ出る。
ゆっくりと抱きしめ、気がつけば、乾いた唇に、自分の唇を押し当てていた。
どんなに想いを伝えようと、優しく食むように重ねても、受け止められる事のないキスは、虚しさを増してゆくだけだった。
誰よりも優しい癒しの手も、俺を包み込む事は無かった。
「……璃、子」
首もとに顔を埋め、小さく呟いた。
「巻き込んでしまって……すまない」
絞り出すように発した言葉に、ぐぐーっと想いが込み上げた。
軋む(きしむ)心が、瞳から一筋の雫を溢した。
人生で、これほどまでに切ない涙を経験したことはなかった。
そっと璃子の隣に横たわり、首の下に腕を滑り込ませ、ゆっくり腕の中に抱き寄せた。
璃子……今は、俺が守っているから、安心して眠って。
心の声で囁きながら、璃子のこめかみに唇を当てた。
璃子……
思い出して……
俺たちの絆は、そんなに脆くはないはずだ
そして……
俺が、誰よりも、何よりも、キミを愛しているということを!
俺は、より一層強く抱き寄せ、璃子を一晩中包み込んだ。
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