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「くぅーーーっ染みるぅーーー」
引っ越しで、うまく水分補給が出来ていなかったあたしは、喉を潤しながらゴクゴクと飲んで呟いた。
「お前飲めるようになったの?」
飲みっぷりを微笑ましく見ていた拓にぃが聞く。
「うんっ!練習したのよ。少しぐらいは飲めた方が良いって言われてっ」
「誰に?」
……うぐっ。
――和也さんに
そんなこと拓にぃには言えない。
「誰だったかなぁ~?」
ゆっくりと視線を泳がせながら、もうひと口飲んだ。
「へぇーっ」
拓にぃからは、乾いた返事が返された。
シラッと空気が乾いて、居づらい雰囲気が漂った。
「はいっ。小鉢とサラダ。あと、いつものおばちゃん特製タルタルチキン南蛮!」
ナイスなタイミングで、おばちゃんが、あたしと拓にぃの前に、お皿をコトリッと置いた。
「おっ、待ってました」
「あたしも!これ絶品だからねっ」
お互いに感じていた空気だったのだろう。
払拭するかのように、ふたり同じタイミングで、おばちゃんに相槌を打った。
「あら、ありがとっ」
喜ぶおばちゃんを前に、あたしは、特製タルタルをちょっと摘まみ食いした。
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