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最後の夜――
ひと部屋ずつ忘れ物がない事を確認して回りながら、和也さんとの想い出の記憶も辿りながら整理してゆく。
ベランダで、クリスマスに見上げた空を思いだし、見上げる真似をしたあと部屋を振り返る。
あの時、後ろに立っていた和也さんを思い出す。
あたしは、ひとつひとつの想い出をゆっくりと拾い集めた。
最後に和也さんの部屋に入り、ソファーに座った。
仄かに薫る和也さんの香り……
胸いっぱいに息を吸い込み、ぼんやりと見渡した。
整然と並んだ本や書類。すべての物がきちんと居場所を持ち、主の帰りを待っている。
「あたしも、このまま、ぬいぐるみにでもなってソファーに座っていようかな……痛いよね」
呟いてみながら、ひとりツッコミを入れて苦笑した。
すべての部屋の電気を消して、寝室へ。
和也さんのコロンをふって、ベッドにダイブした。
和也さんの枕をギュッと抱きしめる。
自然と零れ落ちた涙が、枕を濡らした。
和也さん……ごめんね
和也さん……ありがとう
たくさんの想いが、最後の夜を包んでいった。
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