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秘書室に異動して、ヘロヘロになっていたあたしに、お昼を食べさせながら微笑みを浮かべる和也さん……
退職の時に、照れながらも、そっと口づけを交わした和也さん……
あたしの周りには、たくさんの和也さんが現れ、どの和也さんも、あたしを見つめ、温もりをくれていた。
「松本部長……あたし、退職することになりました。
せっかく育てていただいたのに、肝心なところでミスしてしまったみたいです。
出来の悪い部下でごめんなさい。
でもあたし……会社はもちろん、大切な人達だけには迷惑をかけたくなかったんです。
松本部長……これでよかったんですよね?」
気づけば、届くはずのない言葉を、語りかけるようにそっと吐き出していた。
肩の力が抜けた素直な言葉は、あたしの心を落ちつかせ、本来の自然な自分を取り戻させた。
以前よりも、今のあたしの方が、毎日たくさん和也さんを想いだしている。
『和也さん、貴方ならどうする?』
なんて、たくさん和也さんに語りかけるようになっている。
「もうこれで、麗香さんも、青木グループも関係無くなりました。
あたしは、ひとりの女性として、和也さん、貴方を愛し、想い続けていきますね」
実際の距離は、ずっとずっと離れているのに、心は、前よりも和也さんに寄り添っている気がしていた。
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