ずっとそばにいてくれたね 第31話

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お互いに、デニムとTシャツで、拓にぃはスニーカーに、あたしはサンダルというラフな格好だった。 懐かしい景色を見ながら、通学路の途中にある焼き鳥屋さんまで歩く。 「璃子、鞄は?」 「えっ!?要らないでしょ?」 「財布は?」 「そこにあるじゃん」 あたしは、拓にぃのデニムのポケットに差し込まれた財布を指差した。 「なっ!?」 「お腹いっぱい食べさせてくれるって言ったじゃん」 「まったくお前は、あの時も……」 拓にぃは、何かを思い出したようだった。 「どしたの?」 「……いや、なんでもない」 拓にぃは、派手に思い出したくせに口ごもった。 「何よ!?気になるじゃん」 「あーっ、その、お前が俺の財布を自分のと思ってるって話で思い出したんだよ」 「何を?」 「松本さんの誕生日の時に、食事のあとBarでお前の代わりに俺が奢った事を……」 ……食事のあと?少し何かが引っ掛かった気がした。 「……そっか」 「ごめん!どうでもいいことだったなっ」 嘘をつけない素直な拓にぃらしい会話に、胸がチクンッと痛んだ。 「拓にぃありがとう。あの時、メールもらったんだよね。松本部長喜んでたよ。あっ、専務かっ」 わざわざ役職付きで名前を言ってみた。 あの時は、まだ幸せで……こんな事になるなんて想像すらしてなかった。
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