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「ねぇ、おばちゃん、これ作り方教えてよ」
「あら、璃子ちゃん、誰か作ってあげたい人でも出来たのかな?」
……うぐっ
本日2回目の失態!
おばちゃんは、ニッコニコ笑いながらあたしの顔を覗く。
「お、お父さんにねーっ」
「アハハ……お父さんかぁー。彼氏を連れてきたら教えてあげるよっ」
おばちゃんは、笑いながら次のお客さんの方に向かった。
「親父さんには味が濃いんじゃねーかっ」
……うぐっ
キツいツッコミに、チラリと隣を見れば、まっすぐ前を見ながら南蛮を頬張る拓にぃがいた。
「あっ!半分こだからねぇーっ」
「わかってるって……」
「もぉー拓にぃったら」
あたしは、視線も合わせずに言い放つ拓にぃに言い返した。
だけど、拓にぃに、まだあたしの心を独占している和也さんの存在を見抜かれた気がした。
きっと、あたしを気遣って外に連れ出してくれたはずの拓にぃに、申し訳ないような、なんとも例え難い気まずさを感じた。
あたしは、苦い気持ちを飲み込むようにグイッと酎ハイを流し込んだ。
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