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「村上姉さん大丈夫?」
「当たり前じゃない、大丈夫よ。まだ2軒は行けるわね」
「まだノロケ足りないんでしょーっ」
「ナニナニ?はちみつ漬けになりたいって!?」
「キャハハハ……溺れさせてください」
あたしたちは、お店を出ると、ふたりで腕を組んで笑いながら駅まで歩いた。
駅のホームで、上りと下りに別れる。
「村上姉さん、今日は、来てくれてありがとうございました」
「もらった勇気のお礼に来ただけよっ」
「ウェディングドレス姿の写真、送ってくださいね」
「了解!璃子、またねーっ」
「お幸せにぃ~っ」
あたしは、先に到着した電車に乗り込む村上姉さんを、両手をめいいっぱい振りながら見送った。
電車の巻き起こす風が、ホームに残ったあたしのスカートをふわりと揺らした。
『坂本と村上に、抜かされちゃうかもしれないな……結婚』
仕事始めのあと交わした和也さんの言葉が、ふと甦った。
「本当に抜かされちゃったね……」
微笑みながらぽつりと呟いた。
愛しあうカップルの数だけ、それぞれの愛のカタチがある。
例え、それが叶わぬ想いであっても、片想いであったとしても、自分の心が満足しているのなら、納得しているのなら、それでいいと思う。
だって、その想いは、誰にも止めることなんて出来ないから。
「ねっ、和也さん……」
秋の夜風は、あたしの火照った頬に、そっと優しく触れて通りすぎた。
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