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「優しい雨だね」
「そうですね」
「雨の日の庭も好きなんだ」
「素敵ですよね」
一歩一歩、芝生の中に敷かれた石畳を歩きながら、ぽつりぽつりと会話を交わす。
庭の真ん中に差し掛かったところで、更科さんは、静かに歩みを止めた。
「突然ごめんね」
「えっ!?」
意味が解らず、あたしは、更科さんを見上げた。
「出来るだけ突然、自然な璃子ちゃんを連れてきてほしいって、優輝に頼んだんだ」
「……えっ!?」
「出来るだけ自然な璃子ちゃんに会いたかったから」
「やだっ更科さんったら」
いつものジョークだと思って軽い返事を返した。
だけど、更科さんの表情は真顔だった。
「でも、心配する必要なんてなかったな」
「えっ!?」
「やっぱり、璃子ちゃんは、変わってない」
「更科さん?」
「それどころか、ますます綺麗になったね」
「……」
からかわれているのか?なんなのか、会話の意図が読み取れない。
「もっと早くに会いたかったんだけど、なかなか璃子ちゃんの面会謝絶が解けなくて……」
突然、木から飛び立った鳥の羽ばたく音で、あたしは、うまく聞き取れなかった。
「えっ!?なんて!?」
「ううん。なんでもない。安心したよって言ったんだ」
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