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11月を迎え、今日は珍しく朝から雨がしとしとと降っていた。
五十嵐邸のお庭の木々たちも、降り注ぐ雨に癒されながら、ゆっくりと大地への恵みを取り込んでいた。
「璃子ちゃん、お客様がお見えになったの、今、火を扱ってるから出てもらってもいいかしら?」
「はい」
お昼の支度をしていた房子さんに言われ、あたしは、代わりに玄関に向かった。
ゴルフ用の大きな傘をさし、玄関の前に横付けされた車へお客さまを迎えにあがった。
運転席の後ろに立つと、ドアがゆっくりと開いた。
「えっ!?優輝さん」
「璃子、久しぶり。元気だったかな?」
あたしのさした傘を受けとると、そのままあたしを傘の中に入れて玄関に向かった。
「……どうなさったんですか?」
「五十嵐さんとは、もともとご縁があってね。今日は、ちょっとお使いを頼まれたんだ」
相変わらずの笑顔は健在で、雨の中でも、しっかり輝いていた。
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