◇◇ 第44章 虹の架け橋 ◇◇

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車内は、いつもの優輝さんチョイスの洋楽のバラードが流れていた。 しとしととふり続く雨を、時折、ワイパーがスーッと拭う。 何を話したらいいのか解らないあたしは、静かに息を潜めていた。 「元気だった?」 「はい。おかげさまで」 まっすぐ前を向いたまま運転する優輝さんの横顔をチラリと盗み見るように窺う。 「そうか」 「ご存知とは思うんですが、岩崎社長のご紹介で、働かせていただきまして。皆さんに、大変良くしていただいてます」 「それは良かった」 少し構えてしまっているあたしと、ぽつりぽつりと会話が交わされていた。 「あっ、先日、村上姉さんに会いまして」 「由香里に?」 「はい。結婚の報告とか言いながら、しっかりノロケを聞かされました」 あたしは、差し障りのない共通の話題をみつけ、会話を振った。 「そうか。由香里、なんか言ってた?」 「えっ!?……何かって?」 「ん?そうだな……例えば結婚の事で悩み事があるみたいな?」 「それならご心配なくです。全然!幸せいっぱいって感じでした。キラッキラに輝いてましたから」 キラッキラのところを手振りを添えて伝えたら、優輝さんは、クスッと吹き出した。
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