◇◇ 第49章 聖なる夜の魔法 ◇◇

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新聞を広げている父親は、ニュースも聞きながら、目と耳、両方から情報を仕入れていた。 テレビや新聞では、連日、青木グループの不祥事が報道されていた。 思わずニュースに目が留まり、心が奪われる。 麗香さんは、どうしているのだろうか? きっと、大変な思いをされている事だろう。 和也さんとの縁談は……実のところどうなっているのだろうか? 渡グループにも、影響が出るのではないだろうか? 「璃子!」 「は、はいっ」 ぼんやりしていた時に、父親に名前を呼ばれ、驚いて返事を返した。 「拓巳くんが待っているんじゃないか?」 父親が、新聞から顔を上げて、あたしに言った。 「う、うん。そうだね」 「璃子ちゃん、『村上姉さん』によろしく伝えてね」 キッチンから、手を拭きながら、母親が声をかけて来た。 「うん。ちゃんと『おめでとう』って伝えておくね」 返事を返しながら、玄関に向かうと、もう一度、母親に声をかけられた。 「璃子ちゃん」 「うん?」 「楽しんでいらっしゃいね」 えっ…… 何気ないひと言だけど、優しい眼差しの母親の言葉に、一瞬、間があいた。 「あ、うん。楽しんで来るね」 「いってらっしゃい」 「いってきます!」 あたしは、手を振ると、笑顔で玄関を閉めた。
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