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「あの女とは、どなたの事ですか?」
ゆっくりと、締め上げるかのように聞く。
「ふっ、あんな女のどこがよろしいのかしら?
家柄も、女としても、私とは、比べ物にならないわ」
「あんな女、ですか?」
「ええ、そうですわ、桜井璃子。貴方の足を引っ張るだけの使えない女」
開き直った麗香は、璃子への罵倒の言葉を並べ、俺を下から睨みあげた。
「麗香さん、あなただったんですね。璃子にちょっかいを出していたのは」
「ええ、そうよ。身の程知らずだから、教えて差し上げたの。
貴方から、余計なハエを追い払って差し上げたのよ。
まさに内助の功ですわね」
麗香は、自慢気にいい放つと、微笑みを浮かべて、俺を見た。
「あんな女……。
あなたの言う『あんな女』が、私を窮地から救ってくれた訳だ……」
「えっ!?」
よく聞き取れなかった麗香が、怪訝そうに俺を見上げる。
「フフッ……いえ。こちらの話です」
俺は、璃子を思い、微笑みを浮かべた。
「今さら、桜井璃子はどうでもいいわ。
和也さん、貴方は、もう私と結婚するしか道は無いのよ。
お父様は、株主の皆さんをお仲間に加え、実のところ、すでに渡グループは、お父様の物なのよ。
和也さん、貴方の首だって、お父様のご機嫌ひとつで、どうにでもなるわ。
例え会社を辞めたとしても、どうかしら?お父様の息のかかった人に阻まれ、働く事すら難しいはず。
頭の良い和也さんなら、そのぐらいお分かりになるでしょう?」
麗香の俺を蔑む言葉は、とどまるところを知らなかった。
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