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Turururu……Turururu……♪
その時、麗香の携帯が鳴った。
「いったい、こんな時に何!?」
苛立つ麗香が、携帯に文句を言う。
「時間のようですね」
「はっ!?まだ、何も解決してやしないわ」
「いいえ。もうおしまいです」
俺は、静かに伝えた。
「何を、仰ってるの!?
あぁ、もう、こんな時にうるさいわね」
鞄から携帯を取り出した麗香が、イラつきながら切ろうとする。
「その電話には、出た方がいい」
「えっ!?」
鳴りやまない携帯を持ち、麗香が、俺を見る。
「二度と璃子には近づかないでください。次は、俺が許さない」
「何ですって!?」
「さようなら、麗香さん。もう二度とお会いすることは無いでしょう」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」
背を向け、立ち去る俺を、麗香が呼び止めるが、俺は、お構いなしに歩みを進めた。
鳴り続けていた携帯の呼び出し音が止まる。
はじめは、強かった麗香の口調が、やがて弱々しく聞こえなくなった。
そして、背後で麗香の泣き叫ぶ声が響いた。
……終わった。
俺は、そのまま振り返らず歩き続け、ホテルへと向かった。
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