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月が、ニューヨークの街を照らしていた。
コートの襟を立て、一歩一歩、力強く踏み出す。
肌には刺すような冷たい風が当たっていたが、気持ちは、ずいぶんと晴れやかで、心は、ほっこりと暖かだった。
「璃子……」
愛しい名前を、そっと呟く。
ただそれだけでも、胸には、じんわりと染み入るような温もりが広がった。
隼人からの電話の内容は、青木グループが、巨額の粉飾決算で摘発されると言うものだった。
…………
……
『和也いいか!よく聞け!
あと数時間後に、青木の会社と自宅に警察が入る。青木の親父には、逮捕状も出ているようだ』
「えっ!?」
『詳しくは解らないが、今まで動けなかった警察が、動けるようになったと言うことは、何か、有力なリークがあったのだろう。
見えない、大きな力が働いたようだ』
「見えない……大きな力?」
『あぁ、女神が微笑んだのかもしれないな』
「……女神」
『どちらにせよ、俺たちにとってはチャンスだ。
日本の方は、すでに手を打ってある。
ニューヨークは、任せたぞ』
「あぁ、解った」
……
…………
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