◇◇ 第49章 聖なる夜の魔法 ◇◇

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「遅せーぞ!」 外に出ると、いきなり、家の中の優しい言葉とは違う、少し乱暴で冷たい言葉が飛んできた。 3日前に、ニューヨークから帰国した拓にぃだった。 「まだ、5分前じゃん」 「はぁ!?社会人は10分前集合だろう?」 「はいはい。申し訳ありませんでした、拓巳さま」 「おっと、ずいぶん素直だな」 「連れていっていただきますので」 拓にぃは、あたしの荷物を受けとると、後部座席に乗せた。 「かわいい格好してきたんだろうな?」 拓にぃが、和也さんに去年プレゼントされた白いコートを着たあたしを、上から下まで見下ろす。 「驚くなかれ!アニキ、中は、びっくりするくらいかわいい、新作のワンピースですぜ」 あたしは、おちゃらけながら言った。 「じゃあ、びっくりさせたら、みんなに迷惑かけるから、コートは脱ぐな」 「なっ!?なんで、そんな意地悪言うのよーっ」 「別にぃー。いくぞ」 拓にぃは、ふふんっと、鼻で笑いながら車に乗り込んだ。 「もぉーっ、お世辞でもいいから、もうちょっと『かわいいよ』とか、『素敵だよ』とか、栄養になる言葉をかけれないかなーっ」 「なんで、お前に栄養あげなきゃならないんだよ。それに、俺、お世辞言えないから」 「くぅおーっ」 目を見合わせれば、拓にぃが、ぷっと吹き出した。 いつも通りのテンポの良い会話に、笑顔で車に乗り込むと、そのままゆっくり走り始めた。
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