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いつまでも、沈んでちゃいけない。心配かけちゃいけない。
あたしは、車内の空気を変えようと、必死に会話の糸口を探した。
あっ、そうだ……
「ねぇ、拓にぃ」
「ん?」
「明日のクリスマスって、夕方からひま?」
「えっ!?明日?そんなの予定びっしりに決まってんだろっ」
明らかに動揺を見せた拓にぃに、あたしは、すかさずツッコミを入れた。
「へぇーっ、さすが、よりどりみどりの拓にぃは、忙しいよねーっ」
「まぁな、引く手あまただからな」
「じゃあ、いいやっ」
「なんだよ。聞くだけ聞いてやるから言えよ」
「あっ、やっぱり、ひまなんだ!」
「なんだよ。早く言えよ」
拓にぃは、必死に照れ隠しをしているようだった。
「明日ね、今、お世話になってる五十嵐さんって方のお屋敷で、クリスマスパーティーがあるの。
仲良くしている男性がいらしたらエスコートしていただいて、一緒にどうぞって言われてて。
拓にぃ、一緒に行ってくれない?」
赤信号に引っ掛かり、拓にぃが、ゆっくりとブレーキを踏んだ。
「まぁ、人選は、間違ってないな」
「でしょっ」
「だけどな、璃子……」
言いながら、拓にぃは、ゆっくり顔をあたしに向けて続けた。
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