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和也さん……
切ないまでの眼差しが、あたしを更に貫く。
あの時、あたしは……
自分さえ、ひとりじっと黙って我慢すれば、きっと事態も収まるのかなって……
そう思って頑張ってた。
でも、あたしは、ひとりじゃなかった……
和也さんも、こんなに苦しんで……
あたしのことを、しっかり想ってくれていたんだ。
眉間のしわに、罪悪感を滲ませる和也さんを見つめながら、あたしは、じわりと心に広がる、温もりを感じていた。
「姉さんには、詳しい話はしなかったんだ。
訳ありで、女子社員をひとり、しばらくのあいだ、預かってほしいとね……
但し、俺の姉であることは、絶対に伏せておくようにと頼んだんだ」
「お姉さんって、言ってくれても良かったのに……」
「いや、もしあの時、キミが知ってしまっていたなら……
キミは今、ここにはいなかったかもしれない」
確かに……
あの時のあたしなら……
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