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時田さんが、五十嵐邸に迎えの車を回してくださると、薫さんから聞かされたものの、さすがに恐縮したあたしは、荷物を抱えて、ゲンさんのお屋敷へと向かった。
「璃子さん!」
あたしを見つけた時田さんは、ちょっと驚いたような、大きな声をあげた。
「時田さん、今日はよろしくお願い致します」
「あちらのお屋敷まで迎えにあがりましたのに。
寒かったでしょう?」
「いいえ、とんでもない!乗せていただけるだけで感謝です」
あたしの言葉に、時田さんは微笑んだ。
「あの、時田さん」
「はい?」
「ゲンさんは、今日もお帰りになられてないようですね。
いつお戻りのご予定ですか?」
「旦那様は、ただいまご旅行中でして、明日の夕方お戻りになられます。
本当は、行くご予定ではなかったのですが、クリスマスパーティーの翌日、急遽、お仲間の皆様が企画されていたご旅行に、参加されたんです」
「そうなんですね。薫さんから『数日、旅行で留守にする』とお聞きしていました。
ですが、出来れば、年末のご挨拶がしたかったもので」
「お心遣いありがとうございます。
旦那様からも、璃子さんによろしくお伝えするようにと、申し受けておりました。
璃子さんのお気持ちも、私が間違いなくお伝えさせて頂きます」
「そうだったんですね。ありがとうございます。
年明け早々の、ゲンさんのお土産話を楽しみにしておきます」
あたしの言葉に、時田さんは、静かに微笑みを浮かべた。
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