◇◇ 第51章 あなたのもとへ ◇◇

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「続きは車内で。お風邪をひかれては困りますので。 どうぞ」 時田さんは、後部座席の扉を開けてくれた。 「ありがとうございます」 初めて時田さんにエスコートされ、乗せていただく。 高級車の後部座席に、思わず緊張が走った。 うわぁ、クッションが違う。 お嬢さまにでもなったかのような感覚に、身が引き締まる思いがした。 「では、参ります」 「はい。よろしくお願いいたち?ます」 しまった!?……噛んだ…… 緊張のあまり、変な言葉遣いになったあたしを、時田さんが、バックミラー越しに見る。 思わず目を合わせたあたしたちは、同時に、クスッと笑いあった。 ゆっくりと走り出した車が、白く舗装された敷地内の道を進む。 五十嵐邸とは違い、すっきりとした並木道が、門戸まで続いていた。 門を通り過ぎた時に、振り返って表札を確認する。 大きな表札には、『松本』と、立派な行書体で書かれていた。 「ご確認出来ましたでしょうか?」 あたしの様子を見ていたのだろう。表札を確認したあたしに、時田さんが、尋ねた。 「……はい」 あたしは、小さく返事を返した。
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