◇◇ 第51章 あなたのもとへ ◇◇

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翌日、あたしは、久しぶりに清々しい朝を迎えていた。 昨夜は、別れた1時間後に携帯が鳴った。 「ただいま」 受話器から聞こえる、さっきと変わらない、穏やかな声。 「おかえりなさい」 うれしくて、恥ずかしくて、声がうわずる。 「今から、もう一度、逢いに行こうかな」 「えっ」 そんな、甘い言葉に、キュンと心が、小さく悲鳴をあげる。 『もう一度、逢いに……』だなんてっ♪和也さんったらぁ…… くぅおーーーんっ! 電話を切ったあと、キュンキュン叫ぶ胸の締め付けに耐えながら、お布団を抱きしめ、ベッドで悶えていた。 いつでも声が聞ける…… すぐに逢えるところにいる…… ニューヨークとの遠距離を経験したあたしは、和也さんが、本当に近くにいることを感じ、胸に広がる温もりを味わった。 「いってきまぁす」 いつも通りに家を出る。 朝のお日さまの光が、キラッキラッと、水面に照り返す日射しのように眩しくて、小鳥のさえずりまでもが、祝福の鐘の音に聞こえる。 2日前の景色とは、明らかに違う。 パレットに出したばかりの絵の具のように、みずみずしくて、艶がある。 なんて現金なあたし♪ いや、世の中の女性、みんなそうだと思う。 大好きな人と、心が通いあう、たったそれだけで、なんでも出来ちゃう気持ちになれちゃうんだから! あたしの心は、軽やかにステップを踏みながら、いつものように五十嵐邸へと向かった。
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