◇◇ 第51章 あなたのもとへ ◇◇

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「おはようございます」 いつも通りに門のインターホンで声をかけ、中に入る。 並木道を歩きながら、ゲンさんを探した。 あれっ?……いない。 「ゲンさーん」 叫んでみたが、あたしの声は、虚しく木々の中に吸い込まれていった。 しばらく、うろちょろ探してみたけど、やはり姿が見えない。 五十嵐邸に通い始めて以来、こんなこと初めて…… ましてや、昨日の今日…… 何かあったのかな? 一抹の不安を抱きつつ、あたしは、仕方なく屋敷へと向かった。 「おはようございます」 「おはよう、璃子ちゃん」 意味ありげな薫さんの笑みと挨拶。 昨夜の今朝で、気恥ずかしさに襲われる。 「昨日は、ありがとうございました。とても楽しい時間を過ごせました」 「ふふふっ、こちらこそ。 っで、昨夜の桜井家での和也は、どうだったかしら?」 聞かれて、昨夜の屋敷を出るシーンを思い出す。 隼人さんの言葉といい、みんな知っていたんだと思うと、『妄想列車』を走らせていた自分が、恥ずかしくなった。 「とても素敵なご挨拶をしてくださいました」 「そう、良かった。これでも、姉として、心配してたのよ」 薫さんのホッとした笑顔に、微笑みを返した。
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