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「あの、ところで薫さん。
今朝、ゲンさん、いえっ、お祖父様の姿が見えなかったのですが…」
あたしは、気になっていたゲンさんのことに、会話を切り替えた。
「あぁ、お祖父様ね。今日から数日、珍しくお出かけらしいわよ。
璃子ちゃんによろしく伝えるようにって言われてたの」
「そうだったんですね。お姿が見えなかったので、ちょっと心配してたんです」
あたしは、ゲンさんが元気な事に、とりあえず、ホッと胸を撫で下ろした。
「時田さんの話だと、ご友人の方々と、泊まりがけの旅行らしいのよ」
「わぁ、それはよかったですね」
「ええ。ずいぶん前に、1度お誘いを断っていたらしいんだけど。
昨晩、急に参加されるって言われたそうで……
お仲間の皆さんは、久々の参加に喜んでくださったようで、快く迎えてくださったって。
でも、急にどうされたのかしらね」
薫さんは、不思議そうな表情で言った。
「素敵じゃないですか。
せっかくですから、楽しんでいらっしゃるとよろしいですね」
「ええ、そうね」
あたしの言葉に、薫さんは表情を明るく変え、あたしたちは、ふたりで微笑んだ。
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