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「とっ、とんでもありません!発送荷物の集荷もまだ来ていませんし……」
「いいのよ、それぐらい私に任せて。今日は、どこかへお出かけなんでしょう?」
チラッと鞄を見ながら、薫さんがからかう。
あたしは、恥ずかしさで真っ赤に頬を染めながら、にっこりと笑った。
「もう少ししたら、時田さんが、お祖父様のご用事で会社に向かうそうなの。
だから、和也のマンションまで、璃子ちゃんを送ってくださるそうよ」
「えっ!?で、でも、それは、さすがに申し訳ないです……」
「もう、今さら遠慮なんてしないのっ」
薫さんが、クスクス笑いながら言った。
「……薫さん」
「璃子ちゃん、こういう時は素直に甘えるものよ」
薫さんが、穏やかな、そして優しい眼差しで、微笑んでいる。
「何から何まで、お心遣いありがとうございます!」
「いいのよ、璃子ちゃんは私の妹なんだから。あらっ、ちょっと気が早かったかしら?」
「そんな事はございませんよ!」
扉の影から、突如現れた房子さんから、ツッコミが飛んできた。
「あら房子さん、油断も隙も無いわねっ」
「はい、心温まる素敵なお話には、鼻が利くんです」
「まぁ、房子さんったら!」
「「「ハハハハハッ……」」」
年末の五十嵐邸に、3人の笑い声が響いた。
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