1813人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
モッコウバラの小道を抜けた先に、大きく広がる芝生の広場。
その先には、満開を迎えた桜の樹が、雄大にその両腕を広げ、父とあたしを迎え入れる。
まだまだ続くバージンロード。
感謝の想いを伝えるには、充分すぎる道が用意されていた。
ゆっくりと、芝生の広場に足を踏み入れる。
芝生の緑の絨毯の上に立つのは、あたしの王子様。
一歩一歩、和也さんへと近づいてゆく。
正装した姿なんて見慣れているはずなのに……
白の膝あたりまでのフロックコートの和也さんは、まさに王子様と言わんばかりの神々しさを放っている。
全身に見とれながら、瞳を見れば、バチッと合った視線に釘付けになる。
甘いマスクと微笑みは、さらに、あたしを蕩けさせた。
ゆっくり父と歩み寄り、和也さんの前に立つ。
和也さんが、ゆっくりと父に頭を下げた。
「和也君。璃子のこと、どうぞ末長くよろしくお願いいたします」
最初のコメントを投稿しよう!