愛する人

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でも市販のルーだけじゃ、あまりにも味気ない気がして、どこの食卓にも同じ味が並んでる気がして、隠し味にコーヒーを入れてみた。 酷が出てまろやかになると、何かの料理番組で言ってた気がする。 私は割れたお皿を素早く片して、出来上がったカレーの味見をしてみる。 「うん、美味しい」 なんて声に出して言ってみたけど、今日のカレーはいつも作るのより本当に美味しく出来た気がした。 これなら木綿先輩も喜んでくれるだろう……。 木綿先輩は私に、料理なんかしなくていいと言った。 料理をしてもらうために、私と一緒に住むんじゃないのだからと……。 初めは木綿先輩のそんな言葉に甘えた。 だけど私も女だ。 好きな人のために、手料理ぐらい作りたい。 ……“好きな人”。 私は今、必死にそう言い聞かせている毎日。 彼のことを早く忘れるために、思い出さないために、なるべく木綿先輩のことを考えるようにしていた。
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