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急に怖くなってくる。
長瀬が一気に遠くなってしまうような……失ってしまうんじゃないかというような、恐怖だった。
咄嗟に身を隠したのは正解だった。
御園さんと長瀬が一緒にいるところに通りがかるなんて、絶対に嫌だ。
気にしないフリはおろか、上手くかわせる自信なんて微塵もない。
そっと様子を窺うと、御園さんが長瀬に駆け寄っていくのが見えた。
ただ、彼女の声の響きは、昨日の昼間にさんざん聞いたものとは全然違っていた。
「長瀬さん……私……もう、どうしていいのか……」
弱々しく、いまにも崩れ落ちてしまいそうな声。
これまで何度も目にしてきた御園さんの切り替えに、今まで以上に嫌悪感がわき上がってくる。
仕事のことならいくらでも耐えられたのに、今になってこんな風に思うのは、嫉妬から、だろうか。
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